古代エジプト語研究[0-2]研究法(その3):John Bryan Callender (1975) Middle Egyptian. Malibu.

John Bryan Callender (1975) Middle Egyptian. Malibu.

本書はJohn Bryan Callender (1940-87) による著作の1冊。彼の著作と
しては Studies in the Nominal Sentence in Egyptian and Coptic. 1984.
の方が有名だが、彼が35歳のときに出版した本書をここで取り上げたい。

本書の内容を一言でいえば、一般言語学からみたエジプト語の記述、
つまり言語学的エジプト語研究の実践書となる。

一部においてエジプト学的な用語が用いられている箇所があるものの
本書の中心部分では言語学の概念や用語が貫かれている。

それを端的にあらわしているのが、次のような本書の構成であろう。

0. Background on Egyptian [pp.1-3]
1. Present Grammar: Introduction [pp.4-6]
2. Phonology [pp.7-13]
3. Morphology and Morphophonology [pp.14-60]
4. Syntax [pp.61-114]
5. Sample Text [pp.115-122]
6. Appendices [pp.123-135]
7. Index [pp.136-139]
8. Bibliography [pp.140-143]

筆者自身、「エジプト学に慣れている読者は間違いなく、本書の構成に対して
標準的な文法書とは異なると感じることであろう」と断っている。

エジプト語の記述の中心は、2. Phonology, 3. Morphology and Morphophonology,
4. Syntax であり、その記述内容の実践が 5. Sample Text で示されている。
また、構文を中心にまとめた 6.3 Table of Predicate Constructions の内容
も実にすばらしい。

1. Present Grammar において、筆者は対象とする読者を表明している。
その1つは「言語学の手法や用語に慣れている一般言語者」であり、
もう1つは「エジプト学者」である。しかし、ある学説を巡っては、「エジプト学に慣れた
読者は困難を覚えるかもしれない」と述べられており、本書の態度は、ある意味で
当時のエジプト学者に冷たい。それは、本書が脱エジプト学的エジプト語研究を
志向しているからである(より正確に言えば、当時はGardiner文法からの脱却)。

このようにしてまで脱エジプト学的エジプト語研究を志向するのは、
「本文法書の目的の1つはエジプト語に対する我々の理解を提示することにあり、
そのためには、多くの場合において、伝統的な範疇を放棄しなければならない」
からである。

エジプト学の伝統に拘ることが重要なのではなく、言語の理解こそが重要である。
この明確な態度の表明に敬服する。

中エジプト語文法といえば Gardiner の Egyptian Grammar が圧倒的な影響力を
持っていた当時において、Polotsky の学説をいち早く取り入れ、かつ言語学的な
視点で中エジプト語を記述した本書の学史上の意義は、実に大きい。

Callnder が若くしてこの世を去ってしまったのは学界にとって大きな損失であった。

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古代エジプト語研究[0-2]研究法(その2):エジプト学的エジプト語研究から言語学的エジプト語研究へ

エジプト学の中でエジプト語を扱った研究の例は多い。文法書、辞書、*資料集の類は、
ほとんどがエジプト学の中で作られた。これら、エジプト学的エジプト語研究の中には
優れた研究が少なからず存在しており、研究の蓄積量は個人が追うには膨大になって
いる。

*資料集:歴史学の立場では史料集となるところだが、ここは言語学の立場から資料集
としておく。

しかし、そのような膨大な研究例があるとは言っても、エジプト学的エジプト語研究では、
言語学的な視点に基づく研究の例が実に少ない。

ここで、言語を扱った研究がそのまま言語学の研究になるわけではない、という点に
留意して頂きたい。

19世紀末から20世紀初頭においては「一般言語学」、そして20世紀末から21世紀初頭
の現在においては「言語類型論」を中心として、言語学は通言語的な用語や概念を整備
させてきた。そのような通言語的な視点が導入されたエジプト語研究を、言語学的エジプト
語研究と呼びたいと思う。

両者のエジプト語研究において障害となることは、言語学用語の定義が異なることである。

エジプト学的エジプト語研究でも、表面的には言語学用語が使用されている。それらを
見て、エジプト語以外の言語を研究している言語学者は、言語学用語として判断するで
あろう。しかし、エジプト学で使用されている言語学用語はエジプト学独自の定義の
もとで使用されていることがあり、他の言語学者が理解できない内容になってしまっている。
つまり、エジプト学で使用されている用語の中には、表面的には言語学用語と同じであるが、
その実体がjargonとなっているものがある。

その最たるものがsuffix conjugationである。この用語の使い方はあまりにも独特であり、
近隣のセム語研究者と対話が成り立たないほど、定義が異なっている。

また、strong verb/weak verb, prospective, transliteration/transcriptionについても
注意が必要である。

いや、そもそも、Egyptian, Demotic, Copticという用語の鼎立から整備し直さなければ
ならないであろう。

このような現状において、言語学で一般的に使用されている用語を使用すればそれで
よいのだが、それだとエジプト学的エジプト語研究を実践しているエジプト語研究者に
理解されないという困った状況がある。

とはいうものの、言語学者に通用しないエジプト学的な似非用語など、もはや排除すべ
きではないだろうか。言語学を実践するのであれば、言語学の用語を使用すればよい。

たかが用語かもしれないが、それらは専門用語である。定義が異なれば見えてくる姿も
異なってくるはずだ。

エジプト学という集会の中でエジプト語の議論をすることから脱して、言語学の世界で
エジプト語を研究する人が増えれば、エジプト語研究の質は更に高まるであろう。

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古代エジプト語研究[0-2]研究法(その1):エジプト学という学問が存在していないということ

このタイトルを見たほとんどの人が、このタイトルに賛同しないであろう。

でも、私自身、エジプト学という学問など存在していないと本気で考えている。

私の考えでは、大学に学科が存在しているということと、その学科の名称が
そのまま学問として成立しているということとは、同じではない。
「エジプト学科が存在しているからエジプト学という学問があるはずだ」とは、
私自身、これっぽっちも考えていない。

エジプト学に関わるこの議論を、オリンピックに喩えるならば、
エジプト学は学問なのかという問いは、オリンピックは競技名なのかという問いと
同じレヴェルにあるものだと私は考えている。

オリンピックは様々な競技を総括する祭典の名称であり、競技名ではない。
同様に、エジプト学は様々な学問を総括するための集会の名であり、
これ自体は学問名ではない。

古代エジプトに関する歴史学、考古学、言語学、宗教学、美術史学、建築学、
などなど、様々な学問がエジプト学の名の下に集結しているのであって、決して
エジプト学が独立した学問として存在しているのではない。

とはいうものの、諸学問を総括するインターディシプナリーな学問として、
あるいは最近ではあまり聞かなくなった地域研究としてエジプト学を捉える
のであれば、それはそれで学問になるかもしれない。

しかし、地域研究としてのエジプト学を、その方法論と共に提示している研究など、
ほとんど存在していないのが実情である。一見するとインターディシプナリーなものに
見える研究でも、所詮は諸学問の成果を寄せ集めて1冊の本にしただけであり、
手間が掛かっていても、それでは単なる商品見本と同じ代物である。

ところで、オリンピックにおいては、そこに精神があったとしても、競技としてのルール
をたてることができない。

同様にエジプト学においても、エジプト学的な精神はあるかもしれないが、
エジプト「学」としての学問方法を打ちたてることができていない。

なので、エジプト語という言語を研究するのであれば、「エジプト学的に」などという
思考を取り入れる必要はなく、言語学の1つとして研究を実践すればよいことになる。

このように書いても、「いや、エジプト学は存在しているでしょう」と言う人が
いるかと思うが、その人は、どれほど総合的な学問をしているのであろうか?

考古学を軸にしながら、考古学の事例に合致する内容の文献資料を紹介して、
「考古学的に明らかになったこの事柄は、文献資料からも裏付けることができる」
などと言っているのでは、総合学ではないはずだ。文献資料に書かれていること
がすべて正しいのであれば、文献資料から復元することのできる古代エジプトの
イメージは、もっとゆがんだものになるに違いない。

「エジプト学的に」などという足かせ、あるいはエジプト学に付随する「精神」を
取っ払ってしまえば、資料はもっとも明瞭な姿を見せてくれるように思われる。

エジプト学という集会所の運営など頭の片隅において、学問としての方法や
枠組みには、考古学、歴史学、言語学、宗教学、建築学などそれぞれの学問で
使用されているものを基本路線として採用すればよいことになる。

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古代エジプト語研究[2-7]コプト・エジプト語

*動詞述語文の体系は、ポロツキー以前と以降でまったく異なる。中エジプト語ではポロツキーの研究に否定的な研究者が多いが、コプト・エジプト語ではポロツキーが提示した体系が受け入れられている。こだわりがないのでれば、ポロツキー以降の文法書をおススメする。

[文法書(ポロツキー以前)]

book Lambdin, T.O. (1983) Introducion to Sahidic Coptic. Mercer University Press.
Lambdin 博士によるコプト・エジプト語の文法書。Lambdin博士の名前にはセム語の語根 lmd (「学ぶこと」に関する語義を持つ語根) が含まれているとの冗談が言われるほど、セム語学における博士の貢献は大きい。解説は実に分かりやすく、Glossaryも充実している。ポロツキー体系の導入が不十分であるところがなんとも残念だが、良書であり、手元にあると便利な一冊。
 clip Amazon.co.jp

[文法書(ポロツキー以降)]

book Layton, Bentley (2007) Coptic in 20 Lessons: Introduction to Sahidic Coptic With Exercises & Vocabularies.
次のLayton (2004)を簡便にしたもの。適宜、Layton (2004)の参照箇所が示されている。簡便ではあるが、本書にはLaytonの生真面目な性格がよくあらわれている。構文解説はとても良いが、単語や音節の読み方(発音)に関する解説がもう少し分かりやすく書いてあると助かるところだ。

book Layton, Bentley (2004) A Coptic Grammar: Sahidic Dialect, With Chrestomathy and Glossary. 2nd.
サヒーディック方言を本格的に学習したいのであれば、本書は必読です。

[辞書]

book Smith, Richard (1999) A Concise Coptic-English Lexicon. 2nd.
辞書というよりは単語集。全59ページ。語根配列なので、初心者には引き難いかもしれない。

book Azevedo, Joaquim (2001) A Simplified Coptic Dictionary (Sahidic Dialect). Brazil.
母音を含めた表記配列なので、初心者にも引き易い。全186ページ。Crumの辞書の掲載頁が併記されているので、発展学習が可能。辞書本体の前に、機能形態素・機能語、人名、地名、ギリシャ語由来の語彙が添付されている。最初に1冊買うとしたら、これがおススメ。とはいうものの、Lambdinの文法書のGlossaryよりも、何割か多い程度の語彙数だと思う。

book Crum, Walter E. (2005) A Coptic Dictionary. Ancient Language Resources.
コプト・エジプト語の辞書の金字塔。語根配列、全方言を扱った詳細な用例、ぎっしり詰まったレイアウトであるために、使いこなすには慣れが必要。上級者向け。
 clip Metalogosで全てのページが掲載されています。

[その他]
pc Lance's Coptic Language Resources

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古代エジプト語研究[4-0]動詞

pc Sethe, Kurt (1899) Das aegyptische Verbum im altaegyptischen neuaegyptischen und koptischen. 3 Vols.
 エジプト語の動詞について研究する際に手元に置いておきたい著作。
100年以上も前に3巻からなる膨大な基礎研究が提示されていたことに驚く。
 研究の進んだ現在では本書だけで動詞のすべてがわかるというわけではないが、
エジプト語研究のスタートラインにおける「ボタンの掛け方」を知っておくことは必要である。
 なお、リンク元のInternet Archiveからは他にも色々な著作にアクセスすることができる。

book Thacker, T.W. (1954) The Relationship of the Semitic and Egyptian Verbal Systems. Oxford.

pc Gunn, B. (1924) Studies in Egyptian Syntax.
prospectiveの概念を整理した第1部は特に重要。

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古代エジプト語研究[3-0]辞書

《WEB》

pc Erman A. and H.,Grapow (1926-71) Wörterbuch der aegyptischen Sprache. Bd. I-VII.
pc Erman A. and H.,Grapow (1940-58) Die Belegstellen zu Wörterbuch der aegyptischen Sprache Bd. I-V.
中エジプト語辞書の金字塔。

pc The Beinlich wordlist (250k ZIP fileをクリックしてZIPファイルをダウンロード。解凍が必要)

pc Budge. An Egyptian hieroglyphic dictionary. Volume 1.
pc Budge. An Egyptian hieroglyphic dictionary. Volume 2.

pc Mark Vygus. Middle Egyptian Dictionary. [Mar./2009]new

pc Paul Dickson. Dictionary of Middle Egyptian in Gardiner Classification Order. (18.4MB)

pc The Chicago Demotic Dictionary (CDD)

《Printed》

Kahl, Jochem
book (2002) Fruhagyptisches Worterbuch 1: Lieferung A-f.
book (2003) Fruhagyptisches Worterbuch 2: Lieferung M-h.
book (2004) Fruhagyptisches Worterbuch 3: Lieferung H-h.
初期エジプト語の辞書。目下、第3巻までが刊行されている。

book Faulkner, Raymond O. (1962) A Concise Dictionary of Middle Egyptian.
中エジプト語の辞書。もっとも基本的な辞書で和訳も出ているが、この辞書で対処できない語彙も多い。

book Hannig, R. (2006) Die Sprache der Pharaonen. Großes Handworterbuch. Agyptisch-Deutsch (2800-950 v.Chr.). Marburger Edition. Hannic Lexica 1. Phillip von Zabern: Mainz.
古王国時代~第21王朝までの語彙を扱った辞書。語彙数が多く、文字リストも充実している。ただし、出典は明記されていない。

book Hannig, Rainer (2003) Aegyptisches Woerterbuch 1. Altes Reich und Erste Zwischenzeit. Hannig Lexica 4.
古王国時代~第1中間期の資料を対象とした辞書。出典が明記されている。

book Hannig, Rainer (2006) Aegyptisches Woerterbuch II: Mittleres Reich Und Zweite Zwischenzeit (Kulturgeschichte Der Antiken Welt). Hannig Lexica 5.
中王国時代~第2中間期の資料を対象とした辞書。出典が明記されている。

book van der Molen, Rami (2000) A Hieroglyphic Dictionary of Egyptian Coffin Texts.
コフィン・テキストを対象とした辞書。

book Lesko, L.H. and B.S. Lesko (2002-2004) A Dictionary of Late Egyptian. 2 vols.
新エジプト語を対象とした唯一の辞書。

book Smith, Richard (1999) A Concise Coptic-English Lexicon. 2nd.
コプト・エジプト語の単語集。全59ページ。

book Crum, Walter E. (2005) A Coptic Dictionary. Ancient Language Resources.
コプト・エジプト語の辞書の金字塔。使いこなすには慣れが必要。
clip WEBですべてのページが掲載されています。

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古代エジプト語研究[0-1]資料

[全般]

pc Description de l'Egypte.

pc Carl Richard Lepsius. Denkmäler aus Aegypten und Aethiopien.

pc ETANAElectronic Tools and Ancient Near Eastern Archives.
  Oriental Institute at the University of Chicagoが中心となって運営している巨大な
プラットフォーム。ABUZでSearchするか、Core Textsの下方のリストを見ると、貴重
な資料の電子版やネット掲載を見ることができます。以下、閲覧できる著作や論文の例。

古典
Breasted, J.H. Ancient records of Egypt.
Champollion, le Jeune. Grammaire Egyptienne.
Crum, W.E. A Coptic Dictionary.
Erman, A and G., Hermann. WÖRTERBUCH DER AEGYPTISCHEN SPRACHE.
Gardiner, A.H. Egyptian Hieratic Texts.
Gardiner, A.H. Notes on the Story of Sinuhe.
Griffith, F.Ll. The Petrie Papyri.
Möller, G. HIERATISCHE PALÄOGRAPHIE.
Ranke, H. Ägyptischen Personennamen.
Sethe, K. Die Altaegyptischen Pyramidentexte.
Sethe, K. Historisch-biographische Urkunden des Mittleren Reiches.
Sethe, K. Urkunden de 18. Dynastie.

最近の研究
Nishimoto, Shin-ichi; Yoshimura, Sakuji; Kondo, Jiro.
 Hieratic Inscriptions from the Quarry at Qurna: an interim Report British Museum
 Studies in Ancient Egypt and Sudan
(BMSAES) [January 2002]
Zonhoven, L.M.J. Studies on the sDm.t=f verb form in Classical Egyptian.

[ピラミッド・テキスト]

pc Sethe, Kurt. Altaegyptischen Pyramidentexte.

pc Pyramid Texts Online. Complete Hieroglyphs of the Unas Pyramid.

[ステラ]

pc The Dream Stela of Tuthmosis the Fourth

pc Stela of King Kamose

pc Stela of year 400

pc Stela of King Merenptah

[ヒエラティック・パピルス]

pc List of ancient Egyptian papyri: Includes some of the better known individual papyri written in hieroglyphs, hieratic, demotic or in Greek [Wikipedia]

pc The Abbott Papyrus [EA 10221], Column 1-3 

pc Tale of Two Brothers, Papyrus D'Orbiney [EA 10183/6], Column 11

[オストラコン]

pc Ostracon with the Tale of Sinuhe

pc The Deir el-Medina Database

[死者の書]

pc The Book of the Dead of Hunefer[EA 9901/3]

pc The Book of the Dead of Hunefer[EA 9901/5]

[コプト・エジプト語]

pc The Lost Gospel of Judas: National Geographic

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古代エジプト語研究[2-1]初期エジプト語

[表記法]
book Kahl, Jochem (1994) Das System der ägyptischen Hieroglyphenschrift in der 0.-3. Dynastie.
初期エジプト語(第0王朝~第3王朝時代)の文字体系に関する研究。本文が166ページであるのに対して、資料編が850ページ以上もある。

[言語記述]
book Schwitzer, Simon D. (2005) Schrift und Sprache der 4. Dynastie.
表記法から文法まで、第4王朝時代の資料に関する十全な言語記述。論点の中心は表記法の研究にあり、文法記述のページ数は少ないが、初期エジプト語の文法の概要-特に動詞に関する部分-が明らかにされたことの意義は大きい。本文203ページ、資料編約630ページ。Kahl (1994) に続き、ドイツでは初期エジプト語に関する巨大な研究が遂行されつつある。

[辞書]
Jochem Kahl
book (2002) Fruhagyptisches Worterbuch 1: Lieferung A-f.
book (2003) Fruhagyptisches Worterbuch 2: Lieferung M-h.
book (2004) Fruhagyptisches Worterbuch 3: Lieferung H-h.

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古代エジプト語研究[0-1]全般

book Loprieno, A. (1995) Ancient Egyptian. A Linguistic Introduction.
古代エジプト語の表記法、音韻論、統語論がエジプト学の観点から整理されている。言語学を前面に出しているが、トピックの立て方は言語学的ではなく、エジプト学的。エジプト語以外の言語を専門とする言語学者が本書を見たら、エジプト語研究における言語学のレヴェルの低さ(あるいは言語学に対する知識不足)に驚くかと思う。とはいうものの、古代エジプト語を研究する際の必読書。

book Loprieno, A. (2008) "Egyptian and Coptic" In: Woodard, R.D. (ed.)  The Ancient Languages of Mesopotamia, Egypt and Aksum.= Loprieno, A. (2004) "Ancient Egyptian and Coptic" In: Woodard, R.D. (ed.) The Cambridge Encyclopedia of the World's Ancient Languages.
Loprieno (1995) を30ページほど(+文字リスト28ページが添付されている)に縮めたもの。

book Allen, J.P. (2008) "The Egyptian Language" In: Wilkinson, R.H. (ed.) Egyptology Today.
Loprieno 2008=2004のような古代エジプト語の概説。言語学的な内容ではない。

book ヴィヴィアン・デイヴィズ (1996) 『エジプト聖刻文字 』(大英博物館双書-失われた文字を読む) 學藝書林.
第1章 エジプト語、第2章 書体、第3章 表記の原理、第4章 文法の骨組み、第5章 解読、第6章 伝播。
このうち、文字に関する第2章と第3章の内容が特に優れている。

book ペネロペ・ウィルソン (2004) 『聖なる文字ヒエログリフ』 青土社.
言語学者向けの本というよりも、ヒログリフ・ファンに向けて書かれた本。
書字文化の中のヒエログリフが解説されている。

pc Ancient Egyptian Language(=AEL) Discussion List
今更ここで紹介するまでもなく、中エジプト語を勉強している多くの人に
知られているサイトです。TextsとLearningが特に有用だと思います。

pc Egyptologists' Electronic Forum
エジプト語に関心のある人にとって、AELと共に、このサイトはすこぶる有名。
特に、「Archives, FAQs & Links」にある以下のファイルは学習のための最強ツールです。

EEF FAQs
 ・Literature Lists & Databases
 ・Glyphs and Grammars, Part I
 ・Glyphs and Grammars, Part II

EEF Surveys of Digitalised Resources
 ・Online AE Text Resources
 ・Online CG Volumes
 ・E-journals and Digitized Journals
 ・Online Urk Volumes

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古代エジプト語研究[2-5]新エジプト語

[文法書]
book Cerny, J. and S.I. Groll (1993) A Late Egyptian Grammar. 4th edition.
第20王朝時代の非文学語資料を対象とした文法書。

book Junge, F. (2005) Late Egyptian Grammar: An Introduction. 2nd English Edition.
第18王朝~第21王朝時代のあらゆるジャンルの資料を対象とした文法書。
共時的な解説と通時的な解説が同居する場合があるので初心者には難しいかもしれない。初版2001年。

book Neveu, F. (1996) La langue des Ramses
説明が明快で、初心者にもわかりやすい。

book Bakir, A.M. (1983) Notes on Late Egyptian Grammar. A Semitic Approach.
古代エジプト語の歴史的展開として、コプト・エジプト語との連続性を意識して
書かれた本。随所で、アラビア語やヘブライ語の対応表現が添えられている。

[神官文字と文法の初歩]
book Goslin, Lee Sheldon (1998) Writing Late Egyptian Hieratic. A Beginner's Primer.
神官文字の初歩を学ぶための本。無味乾燥な文字の学習を避けるために、
「運命の王子」の冒頭部分(13行)を読むというスタイルが採用されている。
新エジプト語の文型の基礎も一緒に解説されている。神官文字の字形が漢字の画の
ような要素(stroke)に分解されて解説されているのが特徴。

[辞書]
book Lesko, L.H. and B.S. Lesko (2002-2004) A Dictionary of Late Egyptian. 2 vols.
新エジプト語を対象とした唯一の辞書。

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古代エジプト語研究[1-1]文字

[神官文字]
Möller, G. (1909-1936) Hieratische Paläographie.

第1巻(古王国時代~第2中間期)
pc Bd.I, pp.1-22.
pc Bd.I, pp.23-76.

第2巻(第18王朝~第21王朝)
pc Bd.II, pp.1-30.
pc Bd.II, pp.31-74.

第3巻(第22王朝~後3世紀)
pc Bd.III, pp.1-31.
pc Bd.III, pp.32-72.

第4巻(第1巻と第2巻の補遺)
pc Bd.IV, pp.1-15.

メーラーとガーディナーの番号の対応表
pc indexmoller.pdf(オランダ語)

[聖刻文字一覧]

pc Hieroglyphica (CCER)
Gardiner式の文字コードを拡張したもの。この文字コードが、現在、世界基準となっている。

pc Gardiner's Sign List (Jim Loy's Egyptian Hieroglyphics and Egyptology Page)
Gardine式の文字番号。

pc Liste der hieroglyphischen Typen aus der Schriftgiesserei des Herrn F. Theinhardt in Berlin.
1875年に公開されたTheinhardt式の文字コード。Ermanなどドイツの学者は、当初、このTheinhardt式を利用していたが、後にGardiner式に改めた。

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古代エジプト語研究[2-6]民衆エジプト語

[概説書]
book Depauw, M. (1997) A Companion to Demotic Studies. Bruxelles.
民衆エジプト語の資料に関する包括的な手引書。文字や文法のことだけではなく、資料に関する解説も多い。言語学者、歴史学者、文学者、宗教学者など、民衆エジプト語の資料を扱うすべての人に必携。

[文法書]
pc Johnson, Janet H. (2000) Thus Wrote 'Onchsheshonqy - An Introductory Grammar of Demotic. SAOC 45. Third Edition.
民衆エジプト語と聞くと「難しい」と思う人がいるかもしれないが、それは文字の判読に関することであって、文法そのものは中エジプト語よりも簡単である。コプト・エジプト語と新エジプト語がわかっていれば、その中間に位置する民衆エジプト語はすぐに理解することができる。本書のLesson 11, p.95の表は重要。良書が無料で読めるのはありがたい。

pc Egyptian Demotic Guide
Dr. Caldas Vieira女史のサイト。彼女の著書
A Practical Guide to the Grammar of Egyptian Demotic with Texts, Exercises and Vocabulary. 2008.
がPDFファイルで公開されています。

[辞書]
pc The Chicago Demotic Dictionary (CDD)

book Brugsch, H.K. (1867-82) Hieroglyphisch-demotisches Wörterbuch. 7 Bände. Leipzig.
 clip早大図書館

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古代エジプト語研究

今後、エジプト語の項目を作成していこうかと考えています。sign03

目下、想定している項目は次の通りです。
ご意見がございましたら遠慮なく連絡を下さい。

ただし、ノンビリ更新して行きますので、気長にお待ち下さい。snailsnailsnail

しばらくは参考文献を列挙して行きます。
更新する項目は、順不同です。

<古代エジプト語研究>
0-0 全般
0-1 資料
0-2 研究法
1-1 文字
1-2 音韻(アフロ・アジア諸語との比較を含む)
2-0 古代エジプト語史
2-1 初期エジプト語
2-2 古エジプト語
2-3 中エジプト語
2-4 古典エジプト語
2-5 新エジプト語
2-6 民衆エジプト語
2-7 コプト・エジプト語
3-0 辞書
4-0 動詞

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